便秘

便秘でお困りの方へ

便秘でお困りの方へ

便は身体の維持や運動のために必要な栄養素や水分などを吸収した残りカスです。この残りカスは、通常であれば1日1回、肛門から排泄されて食物のサイクルが完了するのですが、これが何日も排泄されず溜まってしまった状態が便秘です。
生活上の問題や身体の問題など、様々な原因で起こります。特に、日本人の場合、食生活や住環境による習慣などで欧米人より便秘に悩む方が多いとされています。
便秘の中には、単なる体質だけではなく、何らかの疾患があって、起こっているものもあります。そうした問題がないか、専門の医師による診察で判断し、治療をすることは、便秘でお悩みの方の不安を軽減することにつながります。
便の問題を人に話すことを恥ずかしがったり、体質だと諦めてしまったりして、診察を受けないままという方もいらっしゃるかと思いますが、当院ではプライバシー保護を徹底しておりますので、安心してご相談ください。

便秘について

便秘とはどのような状態か、はっきりとした定義がありません。しかし、一般的には、3日以上排便がない状態であるか、または毎日排便はあっても、なんとなく出きっていない感じ、つまり残便感がある場合を便秘としています。
その他にも、毎日下剤や便秘薬などを飲んでやっと排便ができる、お腹が張ったり腹痛があったりする、力を入れていきんでもなかなか排便ができないなど、排便に関する「すっきり」とした満足感がない状態が続くケースも広い意味では便秘と言えます。

便秘の原因

大腸を通過するうちに、大量の水分を含んだ食物は残された栄養分とともに水分も吸収され、水分含有量が60~70%という排出されやすい硬さの便となります。しかし、ここで水分が何らかの理由で吸収されすぎて便が固くなってしまうと、便秘の原因となります。
また、大腸から肛門方向へ便が移動するためには、腸の蠕動(ぜんどう)運動と、直腸部分にある括約筋の動きが必要です。この蠕動運動が弱まってしまうケースや、括約筋がうまく緩まず出口方向への便の移動が滞ることでも便秘になります。さらに通り道である大腸に炎症が重なり、通路が狭くなったり、ポリープやがんなどによって通路を塞がれたりすることでも便秘は起こります。
こうした状態は何らかの疾患によるものもありますが、一方で不規則な生活や食物が偏っているなどの生活習慣、仕事などのストレスから便秘を起こすこともあります。
便秘の原因はこのように様々で、その元となっているものをしっかりと見極めて、生活指導も含めた治療を行うことが大切です。便通でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

便秘の種類

便秘には、様々なタイプがあります。原因から大腸の働きにかかわる機能性便秘、腸管の物理的(器質的)変形や狭窄などの器質的便秘、腸以外の全身性疾患からくる症候性便秘、服用している薬剤などの影響による薬剤性便秘の4つに大別することができます。以下にそれぞれの特徴について説明します。

機能性便秘

加齢や生活習慣、ストレスなどの心因的なものによって、大腸(結腸や直腸)の動きや肛門周辺の筋肉の動きなどが乱れます。便秘の中でも最も多く、機能性便秘はさらに3つのタイプに分類されています。

弛緩性便秘(大腸の運動の低下)

大腸は、蠕動運動をしながら食物を少しずつ肛門の方向へと移動させています。この蠕動運動が、加齢や生活習慣の乱れなどで弱まってしまうと、便がなかなか出口へと移動せず、便秘になります。機能性便秘のなかでも一番多いタイプが弛緩性便秘になります。
生活習慣の乱れとしては、運動不足や腹筋が弱まってしまったり、水分や食物繊維分が不足したり、極端なダイエットによるものなどの要因が考えられます。
便秘の症状のほかに、食欲低下、肩こり、肌荒れといった症状、イライラなどの精神的症状があらわれることもあります。

痙攣性便秘(大腸の過緊張)

自律神経のうち副交感神経が興奮しすぎることで、腸管が緊張しすぎて便がうまく腸管を移動できないことで起こります。要因は主にストレスなどの心因的なものであることが多いとされます。仕事などのストレス、環境の急激な変化などから起こります。過敏性腸症候群の便秘型はこの痙攣性便秘となります。
便がウサギの糞のようにコロコロとした形になることが特徴です。

直腸性便秘(直腸に便が停滞)

通常、便が結腸から直腸へと運ばれてきて、ある程度の量が溜まると、直腸が便意を感じ肛門付近にある2種類の括約筋のうち、不随意筋である内肛門括約筋が自然に緩み、排便準備が整います。もう一つの括約筋である外肛門括約筋は随意筋で、肛門を締めて便意を我慢することなどを可能にしています。
しかし、何度も便意を無理に我慢することなどで、徐々に便意センサーの感度が低下し、直腸内にある程度便が溜まっても便意を感じて内肛門括約筋が緩まず、排便できない状態に陥ります。それががこの直腸性便秘です。
何らかの病気で寝たきりの状態など便意を我慢しがちな人、外出先で排便することを恥ずかしがる人などが発症しやすいです。近年では、温水洗浄便座で洗浄水を肛門の奥まで入れてしまうために便意の感度が鈍くなってしまうケースも増えてきていますので注意が必要です。

器質性便秘

大腸ポリープ大腸がんなどが腸管の通路を塞いでいる、腹部の手術などをした後で腸管に狭窄が起こっている、炎症を繰り返すことによって腸壁が肥厚して通路が狭くなっているなど、大腸の器質的(物理的)な変化によって便が通りにくくなっていることによって起こる便秘です。女性では、直腸の一部が膣内に入りこんでしまった直腸瘤などもこの器質性便秘の原因となります。
原因となっている疾患、または状態を大腸カメラ検査などで特定し、それに応じた治療を行う必要があります。

症候性便秘

糖尿病や脳血管障害、甲状腺疾患、パーキンソン病など、腸以外で何らかの疾患がある場合やホルモン分泌の異常のために、腸の蠕動運動が弱まってしまうことで起こるのが症候性疾患です。また、女性の場合、妊娠や月経によってホルモンのバランスが崩れ、この症候性便秘を起こすこともあります。

薬剤性便秘

喘息や頻尿治療、パーキンソン病などの治療に使われる抗コリン薬、気管支の動きを抑える咳止め薬、抗うつ薬などは大腸の蠕動運動を弱めます。こうした薬を服用していると副作用から便秘を起こすことがあります。

便秘の検査

問診によって、便の硬さや色などの性状、腹痛の有無、既往症や服用中の薬についてお伺いします。また、生活習慣についても伺い、その後、必要に応じて医師が腹部を触診して状態を確認します。
その他、検査としては、腸の状態を確認するため、腹部X線検査、腹部超音波検査(エコー)などの映像検査のほか、大腸カメラ検査なども必要に応じて行います。
特に、便秘の検査では、肛門から大腸までの内部の状態をしっかりと確認でき、疑わしい部分の組織を採取して生検を行い、ポリープをその場で切除し、出血部分の止血なども可能な大腸カメラ検査が有効です。また、大腸カメラ検査では、腸の狭窄やねじれなどの問題も確認できます。

便秘の治療

食事療法、運動療法

食事療法、運動療法

機能性便秘を代表として、便秘は生活習慣と大きくかかわっています。多くの場合、食事をはじめとした生活習慣を見直すことで、症状を改善できます。
まず、便の硬さは水分と大きく関わっていますので、水分補給をしっかりと行いましょう。腸をしっかりと活動させるために、1日3食をある程度時間を決めて、毎日同じような時間に食べるようにします。食事内容はバランス良く偏らない内容を心がけ、特に食物繊維を多めに摂ることを心がけます。
また、太りすぎている場合も痩せすぎている場合も便秘を起こしやすくします。ご自分の身長や筋肉量などから計算し、標準体重の範囲内を守って正しいダイエットを心がけましょう。食事量を減らす過度なダイエットは便量も減らしますので、かえって便秘が悪化することがあります。
さらに、運動量が少ないと腸の活動も減ってしまい、便秘の原因となったり悪化させたりします。便秘の方の場合は有酸素運動が大切です。特に歩くことは全身のしっかりした運動に結びつきますので、無理のない程度でできれば毎日、最低でも1日おきぐらいはしっかりと歩く習慣をつけてください。さらにストレッチやラジオ体操なども有効ですので、決まった時間に身体を動かしましょう。

生活習慣改善

食事を摂り、それが胃から腸を通って栄養を吸収し、便となって排泄されるまでの時間はおおよそ決まっています。そのため、寝て、起きて、食事を摂って、家事や仕事などの活動を行う毎日の習慣が不規則であれば、この消化活動に乱れが出てしまいます。
入眠時間、起床時間、食事を撮る時刻(何時に食べるか)と時間(どのぐらいの時間をかけて食べるか)、仕事を開始する時間、体操や散歩の時間など毎日の習慣をできるだけ決まった時間に行うようにしましょう。
また、朝起きたらトイレに行く習慣をつけ、便意を催したら我慢せずにトイレに行き、排便する習慣もつけましょう。
さらに、ストレスを溜めないよう、趣味やスポーツなどを活用し心を解放することも大切です。
当院では、患者様に合わせた生活指導も行っています。お気軽にご相談ください。

薬物療法

薬物療法

便秘の原因をしっかりと把握して、疾患や障害などがある場合にはその治療を適切に行います。特に病変などがなく、生活習慣などから起こる便秘でも、頑固なものについては薬による治療を検討します。
市販の下剤もたくさん販売されています。これらを適切な量と時間に使用することは便秘の解消に役立ちますが、中には使い方を誤るとかえって症状を悪化させたり、腸に異常を起こしたりしてしまうものもあります。自分で判断せずに、しっかりと医師の診断をうけた上で、使用する薬について相談しましょう。
また医師による便秘薬の処方では、近年、身体に負担のない、新しいメカニズムで便秘を解消する薬なども開発されています。
当院では、漢方薬も含めた多くの選択肢から、患者様の体質や便秘のタイプ、生活形態などに合わせた薬をお出しするようにしています。お気軽にご相談ください。

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